日本人と組織

日本人と組織 (角川oneテーマ21)

日本人と組織 (角川oneテーマ21)

久々に本屋。溢れる新書。ざーっと眺める。

手に取る理由は、もちろんいま考えていることとの絡み。
いくつものことをパラレルに考えているので、その琴線にかかるものを手にする。
他の一冊は買ってしまったが、同じ内容の繰り返しでつまらなく、読書中止。
やはり乱筆はいかん。
そして手にした一作がこれ。世の中お盆だったが、仕事場が静かな中での一服読書。

政治経済の迷走の中で、「日本丸」が木の葉のように揺れている。
私も関与する大学、学会、国際研究プロジェクト。これもその影響をもろに受けて大揺れだ。

揺れているものを構成しているのは人間、組織。
それらの目指すものが見えなくなっているので揺れている。
しかし、船を沈没させる訳にはいかない。

漏れている箇所を修復しながら、前へ進まなければならない。大修復が必要かもしれない。
そして走りながら、船を安定して走れるものへと改造しなければならない。

この書の著者は既に亡い。
しかし、組織に関して人類史を俯瞰し、西洋と日本の違いの根本まで立ち入った視点から記された内容から多いに学ぶものがあった。
組織の生き残りと改革の基本は、「トサフィスト的生き方」しかないという強いメッセージ。
トサフィストとははじめて聞くことばだが、聖書の余白にメモを入れる人のこと。
そういえば、地球の時間を六千年あまりと計算して聖書の余白に書いたプロテスタントの坊さんがいて、長い間それが西洋での常識となったあれか、と思い当たる。
歴史における組織の生き残り、発展は、本体とは別に、全ての議論をきちんと索引として残し、それを組織の改革に生かせるかということのみだ、という。
「全部失敗、ハイちゃら」なんて改革は間違いなく失敗につながる、という。


公vs私
組織 vs 個人
理 vs 情
契約 vs あうん

など、普段、別なことばで語られる事柄に関しての客観化した「日本人」的視点の弱点と強み、を俯瞰したいい本だ。
30年前に読んでいたら、人生少しは違っていたかもしれないとも思うが、あの時にそんな余裕などなかったというのも現実。