銀のしずく

札幌でのまとめ買い第三弾。昨年の第2版だ。
今から87年前の1922年に19歳で亡くなった知里幸恵の、亡くなる直前の日記と手紙をまとめたものである。
年譜と手紙、日記だけのもので解説はない。

激しく差別されるアイヌの子と生まれながらも極めて優秀で、アイヌ語研究をしていた、金田一京助に見いだされた。
北海道での差別はひどく、中学への入学は拒否された。
そして東京の金田一京助のところへ出てきたが、心臓病のために北海道へ帰る事もできずに亡くなってしまった。

本遺稿集は、その最後の東京へいく頃から滞在中、亡くなる前までの日記と手紙だ。
純粋に人を思い、病を神からの贈り物と理解し、差別に怒りつつもより大きなものを眺め、自分に与えられた使命を全うしようと言う日々の思いが痛いほど伝わって来る。
涙せずには読めない遺稿集だ。
東京へ来て本郷に滞在し、東大キャンパスの赤門、三四郎池から上野公園、忍ばずの池を巡る描写は、そこに19の幸恵が歩いているかのような錯覚に襲われそうだ。
亡くなる四日前の最後の手紙は痛々しい。
すでに婚約者がいたにも関わらず、心臓病のために医者から結婚不可を言い渡される。そして、それをも神の贈り物と受け止めて、一本のペンで生きる決意を両親に綴っている。
登別に記念館があるという。一度是非、訪ねてみたいと思う。