新しい歩み

新年度開始に当たり、以下の呼びかけを5/1発行予定の連合機関誌に記しました。5/1では情勢が大きく変わっている可能性があるので、ブログにupしておきます。
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東日本大震災を乗り越え、新しい歩みを開始しましょう。

(社)日本地球惑星科学連合会長 木村 学

3.11未曾有の東日本大震災から瞬く間に一月が経過しました。被災地では、生存と復興のための必死の努力が続けられています。改めて被災された方々にお見舞い申し上げますとともに、無念にも命を落とされた方々、ご家族の方々に心より哀悼の意を表します。

計り知れない自然の破壊力の前に、高度に発達した科学と技術も如何に非力であるかを、まざまざと見せつけられたのが今回の大震災です。多くの方々が、「今回の震災をどう捉え、私たちは、今、何をなすべきか?」を必死で考え、行動してきたことと思います。この大災害は、私たちの科学と技術の到達点への猛省を迫まっています。また科学コミュニティーの在り方も大きく問われました。しかし、震災の塗炭の苦難からの脱却もまた科学と技術を柱に据えてすすめるしかないことを改めて自覚し、科学の持つ使命と意義を根底から問い直し、新しい歩みを力強く始めなければなりません。

大規模災害をめぐる科学と技術、その推進体制などへの抜本的検討はすぐにも開始される事柄で、深く関わる地球惑星科学の分野は真正面から真剣にこのことと向き合うことは必然ですが、学会の役割とはなにかということも改めて問われている事柄です。学会およびその連合体でもある地球惑星科学連合は、行政とは協力しつつも、それからは基本的に独立し、国内外の専門分野に関わる、研究者・技術者・教育者・分野に興味を持つあらゆる職階・職種などの会員から構成される学術団体です。学会の内に向かっては、会員や研究グループの研究成果の発表・交流の場を提供・保障し、外に向かっては、「科学とは何か」という点も含めて、科学的な最新成果を発信するという責務があります。その際の研究成果に対する責任は研究者個人やグループに所属することも自明です。多くの学協会、学術会議と連携し、科学・技術に関わる行政府などへの提言も実施することも社会的責務です。

今回の未曾有の東日本大震災に際し、情報の断絶と氾濫という現代社会特有の相対立する状況が生まれ、それが社会不安を増長するという側面と共に安定させるためにも機能するという局面が何度も生まれました。特に地震津波放射性物質拡散に関わる地球科学的情報を、時を遅らさず、かつ正確な情報の発信と評価が問われました。

連合は、この間、震災翌日からHPに特設コーナーを設け、関連研究教育機関の被災実態情報、環境・災害委員会を中心とした地震津波実態の解明に関わる調査の調整、加盟学会・研究機関・グループ・個人の緊急研究報告、被災学生受け入れのための情報など地球惑星科学の分野の負っている緊急対応について調整機能を果たすべく努めてきました。また、会長・セクションプレジデントの連名で、行政による調査研究のみに依存せず、それらを補完すべき研究の促進を呼びかけてきました。一般からの質問に対しては、多くの科学コミュニケーターを要する未来科学館との連携を実施し、適切・正確なアウトリーチを実施する体制を取っております。

3-4月期多くの学会が開催中止を決めましたが、連合は、この分野の負っている社会的使命を鑑み、よほどの困難が発生しない限り、開催することを決め、成功させるための最終段階にあります。大会では、今回の地震津波・震災に関わる一般向け緊急パブリックセッション、学術会議と連携して開催するユニオンセッション、そして一般セッッションとしての緊急セッションを開催することと致しました。

海外からも多くの応援メッセージが寄せられ、連合としても地球惑星科学分野の教育と研究における受けたダメージからいち早く回復し、途絶えることなく発展させるために緊急義捐金受付を開始しました。皆様の熱いご支援を改めてお願いする次第です。

日本の総力をあげて生存と復興のための努力が続き、震災の科学的検証・緊急対策が必死に続けられている最中に新年度が開始されました。このような中だからこそ、私たちの科学の使命を一層自覚し、研究・教育、そしてこの科学リテラシーの国民的普及に一層邁進しようではありませんか。5月開催の連合大会をなんとしても成功させましょう。

改めて呼びかけさせていただくとともに、会員の皆様の一層のご尽力、ご協力をこころからお願いする次第です (4/11記)