チベット高原

連休の最中に授業があった。
大陸の衝突と山脈の形成にからんで、チベット高原をめぐる地質学などの科学の議論を紹介した。
しかし、世の中の関心は、北京オリンピックにからんだチベット問題。

大地の下をめぐる議論は詳しいのに、その上に住む人間社会などのことはほとんど知らない。
地球の歴史だけではなく人間の歴史にも私は関心があるのに無知!
そんな自分を恥じた。

そんな時、通勤途中の東京駅の本屋で、平積みとなっているこの本を手にした。

ダライ・ラマ自伝 (文春文庫)

ダライ・ラマ自伝 (文春文庫)

仏教者としてのすばらしい人間観・人間性と、背負った国や歴史の悲劇の宿命が伝わってくる。
チベット地震が多い。しかし実は豊富なウラン資源等、なぜ中国がこの地にここまでこだわるのかがよくわかる。。

先日、アメリカへ出かけた際に、天安門事件で国に帰れず、アメリカに定住した有名な中国人研究者と話をした。
彼は、チベットの大地を最近研究しはじめていて、是非一度、一緒にチベットへ行こうと声をかけてくれていたからだ。
チベット研究、どうするんだい?もめてるけれど」
「オリンピックが終わらなければ入れないだろうね、西側からはーー」
彼は天安門事件後、しばらくして国へ入ることが許された苦い経験を持っているので、きっと全く別な冷ややかさで国を見ているに違いないと思ったが、それ以上突っ込むのはやめた。

行く予定はないのだが、純粋に地球科学者として、地球の屋根、ヒマラヤそしてチベットには是非一度行ってみたいところだ。
しかし、この本を読んでしまったからには、もうそれだけの純粋さだけではこの地を見る事はできなくなった。