人類の足跡

人類の足跡10万年全史

人類の足跡10万年全史

最近の人類学の革命が記された画期的翻訳本。
2005年時点での、ゲノムの解析による人類進化の革命的解明と実際に研究に従事している著者の見解を記してある。
世界史の教科書ではフロントの1ページの半分くらいしか記されていない人類史。
地球史では最後の半ページにちらっと記してある程度である。
しかし、いまや地球環境問題は人類の未来を問うている。
さる廃棄物処理では10万年未来を予測せよという。


しかし、人類の歴史を知ると、そのような未来に住む人類はミュータントであることは明らかだ。
なぜなら10万年前には、白人も黒人も黄色人種もなく、一方でネアンデルタールなどの他の人類が共存していたのだ。10万年未来に新しい人類が生まれていたってなんの不思議もない。

今人類学は古い考古学、化石人骨や歯による形態分類学、そして比較言語学などの枠組みを大きく超えてゲノム解析が革命を引き起こしている。まだまだ未解明部分は多いのだが、イブ仮説、出アフリカ仮説、ベーリンジア問題、モンゴリア起源と進化問題、寒冷地適応と人種など、ありとあらゆる興味が埋め込まれている興奮の書だ、これは。


これほどの人類進化と地球変動を包括して、グローバルに日本人の起源論を展開しているという話は、日本ではほとんど聞かない(私の勉強不足かもしれないが)。


そしてなにより、気候変動、火山爆発、テクトニクスによる大地形バリアと人類の移動など、地球科学と人類進化をつなぐ新しい話題が満載である。

約500万年前以降の地球、そしてここ数万年前の地球と人類の関係を知りたいと思う人には是非、おすすめだ。
少々訳語が気になったりするが、そんなことは小事である。