気候変動と造山運動

21世紀に入り、地球科学において、気候変動は地球温暖化と絡んで大きな研究課題となっている。
私の研究分野であるテクトニクスは、たとえば20世紀的には大陸の衝突によって大山脈が出来、それが大気の循環を変え、結果として気候変動に影響を与えるので、気候変動のもっぱら原因の側に位置していた。
たとえばヒマラヤ山脈の形成が原因となり、日本の梅雨も関係するアジアモンスーンの成立等である。
しかし、これまでにない最近の全く新しい議論は、その逆過程である。
すなわち、気候変動がテクトニクスにどう影響を与えるか、という課題だ。
一見、
「え?!たかが風が吹いて山が動く?」と思ってはいけない。
(似たようなことではあるが)
アルプスやヒマラヤなどの山脈形成の非対称性などもこのことに関係しているらしい。
それらの最新の議論をレビューしたものが最新のNature geoscienceに出た。
http://www.nature.com/ngeo/journal/v2/n2/index.html

これは、固体地球と表層流体圏地球の2つのシステムの相互作用を解く、重要な鍵であり、まったく新しいフロンティア科学だ。
これで一気にこの研究の最新事情が見える。
日本では、この研究に本格的には誰も取り付いていない。今後、発展させるべき分野だ。
おもえば、2001年に、アメリNSFが出したアメリカ地球科学の戦略文書:Geosciences beyond 2000にはすでに書き込まれていた研究対象が、10年足らずでここまで来た。