学会ってなんだ?(2)院生の声

緊張しつつも、院生の貧乏生活について訴えた。
(すべて当時です)
大学院年齢は親からお金をもらえる歳ではない。
1)修士奨学金貸与率は半分。(当時は全て無利子、研究職や教育職につけば返還免除)、博士課程は貸与率100%。
しかし、それらは全てぎりぎりの生活費。調査や学会などには全く足りない。そのための援助はない。アルバイトに追われる。
2)オーバードクター問題が一部で深刻化。教員との間で摩擦が起きれば、ひとたまりもない現状がある。

学会に御願いしたいことは、
1)院生会費を設けて欲しい。
2)大学教員の職に関しては公募にするよう全国に促して欲しい。
3)院生評議員枠を設けたことは是とするが、参加のための旅費を支給して欲しい(貧乏な院生が募金をして私は参加している)
などを訴えた。
加えて、
4)学会誌は日本語が主であるが、英語をメインにしてはどうか?これからは国際化が大事だ。
などなどを御願いした。

偉い先生たちが集まっている会議の中身は最初の私には何を議論しているのか全く理解できなかった。しかし、私の番が回ってきて何かいえということなので、院生の間で話し合い、夜行列車の中で準備してきたことを述べただけであった。それは、「空気を読まず」に発言したのに等しかったのか、あるいは私の「ものの言い方」がまずかったのか、突然、どっと反発が来た。

「院生会費を設けろとは何事か!君たちは常日頃、<自分たち院生を一人前の研究者として扱え、院生にも評議員の枠をよこせ>と言ってきた。だから、枠を与えた。今度は院生会費を設けろ?一人前を主張するなら一人前払え!」
「学会にはお金はない。私たちも皆手弁当でこの会議に来ている。学会とはそういうものだ!調査も、学会参加も皆自腹を切ってやっている。それは当たり前なのだ!」
「院生というのは自分たちのエゴしか考えないのか!」
「英語にしろ?私の論文は、アメリカ人が自ら翻訳をしてまで読みたいと言ってきた。そういう内容の論文を書いてからものを言え!」

もう散々、ボロクソであった。
これが、戦後「民主化をした」という学会なのかと、耳を疑った。
会議の後の懇親会の席となった。優しい笑顔の先生が寄ってきた。
「院生というのは大事だと思っているんだよ。将来を担う人たちだからね」
ありがたいと思った。でもそうなら、<なぜ皆の前で言ってくれない?>と思った。

別な先生がやってきた。プレートテクトニクスに反対する高名な「大規模海水準上昇、地球膨張」を主張している先生であった。
ちょっと酔って赤ら顔である。
「君はプレートテクトニクスをどう思うかね?」
「いいと思いますよ。分かりやすく、私はそれを基に研究をしています」
「何!お前もか!けしからん!」

これは大変なところへ来てしまった。とんでもない役を引き受けてしまったな、と思った。でも逃げる訳にはいかない。
最初のいきなりのダブル、いやトリプルパンチは、逆に私の肝を座らせてくれた。
これは戦わなくてはいけない、と。

(つづく)