現代地球惑星科学元年の伝承

昨日は駒場で講義であった。大学生はいよいよもって90年代生まれ。時の流れは速い。

1969年人類がはじめて月へ行ったあの時の感動も、そして時を同じくした地球科学におけるプレートテクトニクス革命もすべてが彼らにとっては生まれる前の出来事なのだ。しかし、それらはまちがいなく現代へつながる地球惑星科学の原点であり、それらに遭遇した私たちの世代は、その意義を確実に伝えなければならない。

90年代生まれの世代にとって、上の出来事は、今から40年前のことだ。そのような昔のことはどうのような風景なのかと考える。自分の大学生の頃のことを顧みる。私たちにとって40~50年前の風景とは、1900~1910年頃のことだ。それらは完全に歴史のかなたの出来事だ。日清・日露戦争、第1次世界大戦、世界恐慌ーー。科学の世界で言えばアインシュタイン相対性理論量子力学、ウェゲナー大陸移動説、寺田寅彦ーーー。

そうなのだ。アポロのあの燃え立つような感動は、完全に歴史の彼方の出来事なのだ。その時の風景は、あの昭和のレトロ大ヒット映画、「三丁目の夕日」の延長の中に、登場してしかるべきものとしてある。街頭では学生達が騒いでいる。半年ほど前の安田講堂攻防戦以来全国へ波及した大学紛争で街は騒然としている。毎日流されるニュースのトップは、その騒動を映し出す。海外からのニュースのトップはほとんど連日つづくベトナム戦争。そんな中の一服のオアシスのような月面着陸への挑戦のニュース。

7月15日。街は静まり返る。テレビの前に釘付けとなる。月面からの実況生中継というこの世界の一大ショーは、世俗のすべてを押し流した。それがアメリカの威信をかけた大イベントであると分かっていても見ずにはいられない。やがて白黒の映像と、時差のある同時通訳が流される。自分の心臓の高鳴りさえ聞こえる。はっきりと映し出される着陸直前の逆噴射により舞う月面のほこり。そして降り立つアームストロング飛行士。最初の第一歩のくっきりとした足跡。ーー、突き刺されるはためかないアメリカ国旗。軽い足取りでホップステップ。

そうだ!これらは今、全てYutubeで見ることができる!
http://www.youtube.com/watch?v=RMINSD7MmT4&feature=fvst
満載だ!

これらの映像を教材の中に使うことができる。しかし、やはりその時の日本の映像が欲しいな〜。できれば画面を引くと成長した三丁目の夕日の家族が釘付けとなっているような場面の。
あのなまりと時差のある同時通訳付きでーー。どこかにあるはずだね〜。NHKアーカイブス