海女ちゃん、安部ちゃん、安倍族

NHKの朝ドラ、「海女ちゃん」もいよいよ大詰め最終週。昨日は「安部ちゃん」の結婚と、キョンキョンよりはるかにうまく歌う薬師丸ひろこの肉声「潮騒のメモリー」と、感動場面がつづいた。さてさて大吉君とめでたくゴールと相成った「安倍ちゃん」の姓「安倍」にまつわること少々。別に安倍首相のことではない。

先に私は拙書「地質学の自然観」を記したが、当然にも出版後に間違いのご指摘をいただく。恥ずかしい限りである。近々まとめて出版元に正誤表のネット掲示をお願いする予定。その一つに「阿部」を「安倍」に修正することがある。北海道時代の後輩に「阿部族造山運動」ではなく「安倍族造山運動」であったはずと指摘を受けた。

それで、執筆時に眠っていた昔の記憶がフラッシュバック。
「安倍族造山運動」提唱者のM教授は強烈に個性の教授であった。先祖が秋田の山師(鉱物資源探し)で、自ら先祖にアイヌ系の血が入っているといっていた。また雰囲気も風貌も実に良く似た方が理学部の用務員におられ、私も長い間区別がつかなかった。
教授曰く、欧州では「バリスカン」なり「ヘルシニアン」なり造山運動には、その地に一時代を画した豪族、民族の名を冠するものである。地名を冠するなどけしからん、と地向斜造山運動で日本列島成因論をまとめあげた東大のK教授のことや、当時次々と提唱される○X造山運動と称する論を批判していた。

さて話を戻して「安倍族」とは、11世紀前半まで奥州を支配した一大豪族で、平安時代中期の最大の内戦「前九年の役」で滅ぼされてしまった人たちだ。滅びたとはいっても権力を失っただけで死に絶えたわけではない。その後の奥州の藤原三代の時代、奥州藤原も源義経と共に滅ぼされる時代を超えて累々とつながってきたはずだ。
それが海女ちゃんに登場する「安部ちゃん」へ。もちろん姓は明治時代になってはじめて一般人も使用を許されるのだが、姓への思いはあったはず。

阿部もしくは安倍姓は、飛鳥時代征夷大将軍阿部比羅夫以来、東北地方に絡んで登場する。征夷大将軍の夷とは東に棲む野蛮人、蝦夷(えみし、えぞ)の夷ですね。すなわち飛鳥奈良の中央日本から見て東に棲む野蛮人をやっつけろというのが征夷大将軍。江戸時代までつづく「将軍様」の由来だ。西高東低社会風潮の歴史的ルーツともいえる。そこは縄文時代以来多くの原日本人の棲んだところ。東北の歴史は面白そう。まだまだ勉強不足。

そういえばM教授出身の秋田(久保田)は、義経が逃げ延びて、ついには北海道へ渡ってアイヌ率いる英雄となったという伝説の地でもある。すでに死語となってしまった造山運動の名前1つにも、M教授の一方ならぬ思い、人間模様が見え隠れする。

海女ちゃんもおわりか〜! 頑張れ東北!