パキスタン「地震島」

ービデオニュース、画像配信を使った地質学的夢想仮説@初秋一夢ーー

(加工画像は、著作権がありますので一般公開の本ブログには載せられません。ただし営利に関わらないfacebookの友達内限定に載せました)

9/24パキスタンでおき300人以上の大きな犠牲者を出したM7.7地震
直後に島が出来たというニュースが世界を駆け巡った。さるテレビ局からどういうことかという取材があり、少々フォローしてみた。ネットでは泥火山が原因と流されているが、映し出された映像を見るとどうもおかしい。

泥火山の噴火したものの現場は、サハリンと北海道の新冠程度しか私は見たことはないが、それらと随分と様子が異なる。そして上陸した島から配信された画像を見ると、海底の層がむき出しになり、それが断層によって段差が出来ているかのように見える。
「これは泥火山なんかじゃない!隆起した海底に断層がむき出しになったものではないのか???」との印象だ。

(画像1解釈付き@facebook

そこでニュースに映し出された島の上空から写した映像に目を凝らした。写真にはスケールもなければ方位もない。だが、泥火山にも特徴的な円錐形などしておらず、妙な筋が見えるではないか!
「このリニアメント(線状の構造)は地層か、断層だ!」

(画像2解釈付き@facebook

というのでもう一度、露頭の写真を見ると、ずれた段差の小さな崖に筋がついているではないか!
地震時の地表断層に現れる擦り傷だ!」

(画像3 解釈付き@facebook

というので、この地震島は、泥火山によるものではなく、恐らく海底が活褶曲の背斜部で盛り上がり、それに伴って小さな活断層が表面をずらしたのではないかと、解釈した。

なぜ活褶曲かって? このパキスタン沖、Google Earthで接近して見ると、東西に伸びた背斜と思わしきものが海面から顔を出し、それを砂州によって陸とつないだ地形、そしてその延長に島まであるではないか!

そこで泥火山説の可否。もう一度、島の写真に目を凝らす。
「本当にこれだけじゃ、どうしようもない。できるなら現地へ行きたい」(心のつぶやき)

その後、配信される映像を見ても、泥火山らしきものは見当たらない。

そこで泥火山説報道のルーツをたどった。
それは、これだろう。

Natureblog(http://blogs.nature.com/news/2013/09/deadly-pakistan-quake-may-have-unleashed-a-mud-volcano.html

UC BerkleyのMichael Mangaのコメントだ。
2001年の地震時に泥火山が海面に顔を出したことがあるので、それだろうという。2010年11月に出現し、2011年1月には消滅した写真付き解説だ。
(画像4)
ーーーThe description of the island, and its distance from the quake’s epicentre, is consistent with a mud volcano, says Michael Manga, a geoscientist at the University of California, Berkeley、
ーーー In 2001, a magnitude-7.7 earthquake in Pakistan initiated a mud eruption 482 kilometres away, Manga says. And mud volcano islands have appeared along this part of the coast before(2010年11月に出現し、2011年1月には消滅したもの)
. Typical mud volcanoes measure tens of metres high, he adds ― enough to break through the water’s surface and form new land.

これが世界中を駆け巡った。さすがNatureとUC Berkley教授コメントの威力だ。私も米国の友人がfacebookでリンクしたのでこれを知っていた。

さて、泥火山説はおかしいと思い、他に説明はないのかと、ネットサーフしていると、イギリスのBBCが、専門家の解説を報じている。イギリスなまりで聞きにくいのだが、その説明を聞いていると、決して泥火山とは言っていない。むしろ地震時の地殻変動で海底が盛り上がったとの主旨を述べており、かつてチリ地震のときもそのようなことがあったと言っている。

「これが正解だ!」と思った。

パキスタン沖は、パキスタン海岸に沿うマクラン山脈の延長で大規模な付加体からなることで私らの業界では超有名だ。インドとアジアが衝突したために出来たヒマラヤ山脈から本当に大量の土砂が流れ下り、パキスタン沖の海のアラビヤプレートの上に堆積している。そしてそのアラビヤプレートはパキスタンの下に沈み込んでいる。その土砂は陸に押し付けられ、褶曲や活断層だらけの大規模な付加体を作っているのだ。その付加体は、ガスハイドレートや石油胚胎の母体となっているので、昔から石油会社は血道を上げて調査している。特にこの沖合はイギリスのBPが昔から調べている。オクスフォード大のPlatt教授、われらが同僚Lisa McNeilなど伝統的イギリス地質学者たちが研究を継承しているところだ。
(欧米の付加体、沈み込み帯研究の背後には石油会社のバックアップがある。日本とは大違いなのだ。)

そのイギリスBBCの解説の方が、UCBerkley発泥火山説より、私のつたない写真からの憶測と整合的だ。

以上の印象(仮説)が本当かどうか、本来ならば現地を調査して、余震活動、地殻変動を観測して、海底にもダイブして全面的調査のための指針として緊急研究に乗り出したいところです。それにしてもGoogle Earthはすごいね。このパキスタン、一切の植生がなく、褶曲、断層、火山などが全面露出だ!

ちょっとのめり込んで調べてみたが発表する場があるわけでもないので、日本語ではあるがブログにメモ的に残しておくことにした。取材してくれたおかげで機会を得ました。感謝。
初秋一夢。