ある小学校長朝会の記録「童話の窓(3)狼と犬

 骨と皮だけの一匹の狼がいました。
村の犬たちが見張りをしているので食べ物をさがすことができませんでした。
 この狼がある日、道に迷った番犬に出会いました。
 番犬は強そうで美しく丸まると太っていました。
 狼はさっそくつかみかかってズタズタに食いちぎってやろうとしましたが、犬は体が大きくて強そうで勇ましく向かってきそうです。
 そこで狼はおとなしく近づいて話かけ、犬の太った立派な体をほめました。
 すると犬は答えて
「私のように太りたいと思ったら、森の中から出てくるのです。あんな所にいたらあなたの仲間はかわいそうだ。みなこじきですよ。バカだよ。今に餓死してしまいますよ。森の中にいたってちっとも安心してはいられない。食べ物がないだけではなく、今に人間にやられてしまいますよ。
私についておいでなさい。もっと良いところがありますよ。」
「でも、どうすれば良いのですか」
「何もしなくていいのですよ。村の人の家に行って、尾をふれば、かわいがられるのはもちろん、鶏の骨でも、鳩の骨でも、もらえますよ」
狼はすっかり幸せな身分になったつもりで大喜びでした。
 それから一緒に村の方へでかけました。
 歩いているうちに狼は犬の首のところの毛のむしれているのをみました。
「あなたの首はどうしたのですか」
「何でもないのです」
「だって」
「じゃ、首輪の跡でしょう。これで結びつけられるのです」
「いつでもというのではありませんが、時には行けないこともあります。でもたいしたことではありません」
「いいえ、それはたいへんなことです。食べ物よりも問題だ。どのような良いことがあっても私はいやだ。どのような宝物をもらってもいやだ。」
といって狼は逃げ出しました。
教育目標(二)生命を尊重し心身ともに健康でねばり強さのある子(自主)