高知コア研究所10周年

高知コア研究所10周年   定年まであと161日

 高知空港の近く、高知大学農学部キャンパス内に高知コア研究所という、何をしているのか、得体のしれない研究所がある。
かつて戦闘機が飛び立った空港跡地?。草むらに見え隠れする分厚いコンクリート格納庫。竹やぶの中の意味不明のコンクリートの平打ち。ひっそりと隠されていた赤錆びた手汲みポンプ。そんなジャングルを切り開いて作られた研究所。どう見ても怪しい。最近新たに作られた増設部分には、巨大な完全シールド滅菌クリーンルームもあるという。

 その創設10周年記念の祝賀会と、今後の研究についての討論会が開かれた。
 海洋研究開発機構平理事長、高知大学脇田学長、高知県副知事---、祝賀会は盛大に開かれた。懇親会は高知城を南に下った真正面にある、山内藩下屋敷跡の山翠園。高知には数え切れないほど来ているが、恥ずかしながらこの名所ははじめて。いや本当に観光していなかったと改めて自覚し軽いショック。定年したらのんびりここの湯にでもつかろう。

 さて翌日、朝からびっしりと会議。

 改めてコア研究ってなんだ?
 世界の海の海底下を掘削すると泥や砂、岩石が取れる。その試料は人類のとてつもない財産だ。その試料の事をコアという。

 なぜコアっていうかって? 
 一般にはコアって中心という意味。でもこの研究所でいうコアには、「芯(しん)」と訳したほうがわかり易い。鉛筆の芯っていうね。
海底を掘削して得られるのは直径7cmほどの細長い岩石の柱。しかしその細長い芯を得るために海底に開ける穴は時に直径が1メートルにも及ぶ。でも得られるのはその穴の真ん中の芯だけ。その芯を研究するところだからコア研究所。
 高知には、これまで人類が掘った世界の海の3分の1のコアが保管されている!これってすごい事なんだね。いまドイツのブレーメンアメリカのテキサス、そして日本の高知が連携して3分の1づつ保管しているのだ。保管しているだけではなく、それを使った研究で世界に貢献しようとしているのだね。南海トラフが起こった時でも、この研究所が津波で水没しないようにきちんとしたシェルターにもなっている。

 これって、本当に日本が果たしている、世界への、人類への大きな貢献だと思う。大昔に古代エジプトアレキサンドリアにあったパピルスの図書館が喪失してしまったことは未来永劫の人類史の痛恨であるけれど、それに匹敵する極めて重要な人類の財産保管庫なのだ。
 何があっても守り、育てなければならない。そうすれば必ず世界は助けてくれる。その誇りを静かに確認した祝賀会であり、真剣さに満ちた討論会であった。

 でも、反省。やっぱりちょっとしゃべりすぎで、話が長い、とあちこちからネジを巻かれた。思いが上ずり空気と合わなかったか。またやってしまった。
 人には言うのに自分ではできない。人間って本当にいつまでたっても子供だな。もうすぐ定年なのでご勘弁下さい。