僕らの社会主義 その1:読書の動機

僕らの社会主義 (ちくま新書 1265)

僕らの社会主義 (ちくま新書 1265)

 その1:動機
いや〜、面白かった。
この本を手にした動機をまず記しておこう

 アメリカの学会との連携で2017の学会は史上最大規模となり大成功した。

 しかし、近未来日本社会への不安を背景として、今後どのように学会を進めるか、論が割れている。
「もっと国際展開を、特にアジアで先進的役割を」、と「縮小する日本社会、内部を堅実に」どちらに重点を置くかを巡ってである。

 合同の大会は、通常の大会に比べて、アジアから、世界から千人以上の参加者増で大きく成功したのにも関わらず、何なのだこの議論は? 縮小社会への不安からなのか?

 私は、日本は確実急速に縮小していく社会だからこそ、もっと開いて学界での国際的な人の流れを圧倒的に増やし、それを通じて科学・技術の質を高度に維持するのが戦略の王道だと思ってきた。だから内外のバランスは当然の前提として、強力に国際化を主張し進めてきた。多くの人がそう思っていると思っていた。それは誤解だったのであろうか?

 私の周りの40代前半までの若者(?)にはおとなしいながらも「国際派」が多く見えるのだが、どうも50代以上になると分かれているように見える。

 それは、なにやらベルリンの壁崩壊後に急速に進められてきたグローバル化に対するナショナリズムの対置に対する議論にも似ているし、昨今の国内外の不安定を巡る議論、急速な内向き化にも似ている。

 そこで本書のタイトルに気楽な感じの「僕らの」が付いていて、その後に「社会主義」があることに惹きつけられた。昔のように大上段、大真面目、暗いイメージではないのだ。パラパラとめくると、「主義は病気である」とか、我が高校母校後輩のスーパー芸術家、パリ国立芸術学院教授の川俣正のこととか出てくる。
 最近あちこちで大学が改組され、かつての理学部地学は、工学部土木などと結合されるとかが増えている。その「土木の哲学っぽいこと」なども出てくる。そして何より著者が若い!

 読み始めると、一気に引き込まれた。そして、このような若者(?)なら、未来を託せるかもしれない、と思った。

(続く)