多作か、秀作か?黒澤明没後10周年

桜吹雪


黒澤明監督がなくなって10周年、様々な企画がある。
黒澤明の生涯の監督映画数は30本しかないという。意外と少ない!というのが印象である。
監督人生は50年に及ぶのであるから、2年に1本強しか作ってはいない。
しかし、巨匠と言われ、世界に大きなインパクトを与えた。
「寅さん」シリーズは48本なのだから、山田洋次の多作に比べても明らかに少ない。

これを同列に並べて、多い少ないで評価できる?
あるいは映画の観客動員数で評価する?

多作を強いられ、観客動員数を強いられ、そのことに少しでも媚びたと分かる映画は面白いであろうか?
長く長く、見るたびに新しい発見がある名作となり、繰り返し見ようと思うだろうか?


昨今、研究の評価というのがはびこり、研究者はそれに振り回されていかに見える。
「たくさんの論文をかけ!たくさん引用される論文をかけ!そのために良いジャーナルにかけ!」
というわけである。そんな圧力が強烈にかかっている昨今である。

あなたは多作型の書き手?
それとも黒澤明型の書き手?

もちろんたくさん書いて、全てが秀作であることができればいいのではあるが、人間の能力は限られるしね。
「ねばならない」で書かれた論文って、多作でもおもしろくないね。それが透けて見える。

昔まだ若い頃、論文の数は多くはないが、いずれも大きな影響を与えた都城秋穂氏をアメリカのオーバニーに玉木賢策氏と訪ねた事があった。その時のことばを思い出す。

「書きおわった論文をチャーミングでチャーミングでどうしようもないと思えますか?そのような論文を書いてください」

今日の午後は一気に寒くなり、満開の桜は早くも桜吹雪となりつつある。
「花の命は短くて、ーー」だね。