四川省大断層

今回の地震を起こした断層の実態が徐々に浮かび上がってきている。
この断層が、なぜ北東南西方向なのか?プレート境界なのか?
など、今日も議論となった。

そこで少々、解説。
この断層の位置づけをはじめて明瞭に示したのは、フランス人のタポニエ博士ら。
1976年のことだ。
プレートテクトニクス理論が60年代末に生まれ、火山・地震はプレート境界を特徴づける。
例外はホットスポットとまとめられた。
しかし、中国大陸というユーラシアプレートの中なのに、地震もある。火山もある。
プレート理論とあわない。なぜ?
しかし、中国は文革中。外国人は入れない。調査もままならない。
そこで登場したのがランドサットという当時あたらしい衛星による画像。
それは、アメリカと対峙するソ連のもの以外は解像度を落として公開された。
それを使って、中国大陸を一気に俯瞰し、活断層分布を明らかにした。
インドとアジアの衝突によるアジア大陸の大変形として全て説明できるとして、世界をあっと言わせたのがフランスのタポニエ博士とアメリカのモルナーは博士であった。その見事な説明は世界を席巻し、なぜユーラシアプレートという一枚岩の中なのに多くの活断層地震があるのかを見事に示した。
インドがヒマラヤを押上げ、その背後のチベットのブロックはアジア大陸との間で羽交い締めにあい、高く押し上げられるとともに、東へ押し出される。
その押し出された先が、四川盆地にのりあげる西端の大逆断層なのである。

そして、このような大陸の大変形は、海のプレートに通用するプレートテクトニクスの剛体仮説が、陸へはそのままでは通用しないことを示したのである。
だから、「今回の断層はプレート境界?」と聞かれたら、「そうではない!」といわなければならない。
この経過は、木村学著「プレート収束帯のテクトニクス学」(東大出版会)に記した。

私はその当時、大学院生であったが、彼らの説明に大変興奮し引きつけられた。

(Tapponier and Molnar, 1976, Natureを翻訳)

その後、彼らの説明は大論争に巻き込まれる。
ヒマラヤやチベット高原がなぜ高いかをきちんと説明せよとの大反論であった。
その後、タポニエは共同研究者であったモルナーとも袂をわかった。

しかし、それからほぼ30年経ち、GPS地殻変動をとらえ、現在進行形の動きをキャッチ!
2004年。タポニエの説明は見事に定量化されて描き出された。
今回の、Lonmengshan断層をはさんで、チベット高原のブロックと四川盆地は年間4mm前後で縮んでいたのだ!
そして今回、一気にそれがどかん!とずれた!。


GPSのベクトル図

これから、インドとアジアは36mm-40mmで南北に衝突、そして東へはみ出すチベットのブロックは、今回の断層をはさんで4mm/年前後で収束しているのが分かる。図は、アメリカ地質学会発行のGeology 2004、No.9を参照していただきたい(著作権があるので直接のせられません)。