サハリン・犬物語(6)東京にて

大冒険のサハリンの調査を終えて、東京へ戻った。
私のサハリン行きは、東京へ赴任すると同時であったので、あいさつも出来ずにいた。
昔から、研究やら遊びやらでつきあっていただいていた地震研究所の瀬野徹三さんが、一緒に飲もうというので、本郷の丘を降りて、根津の小料理屋へいった。
ひとしきり話をした後に、歌でも歌おうというので、地下鉄駅近くのカラオケバーへ。


まだ開店し間もない時間で、そこに犬がいる!
それは、血統付きのビーグルだ!

しかし、カラオケバーのソファーで横になっている。
見るとちょっと肥満気味。

私は、サハリンであまりにも感動的な出会いがあったので、このビーグルがなんぼのもんか試したくなった。
まず、寝ている犬の頭を起こし、口を両手で空けてみた。
以前ならこんな大胆な事は恐ろしくて出来ない。しかし、いまやなんでもない。

抵抗しない。

では、ちょっと口の中に手を入れてみよう。ついでに虫歯はないか、犬歯は尖っているか、チェック!

抵抗しない。

「駄目だ!こりゃ!犬じゃない!」

そして手を取ってみるとーーー、

爪が伸びきっている!

「ママさーん、駄目だよこりゃ!もう犬じゃない。爪くらい自分で研げなきゃ!」

「もう、ばーさん犬なんでねーー」

<ばーさんだって? あの単なる雑種の、サハリンのボスばーさん、と違いすぎる!>

私は、犬も人間がいなければ生きていけなくなると、こうも堕落するのか、とちょっと悲しくなった。
でも、これだけ無抵抗だということは、逆に人間は悪い事(命に関わる)はしないものだと安心しているのであろうか、と分からなくなった。

しかし、私は
「絶対に犬を飼うぞ!」と心に決めた。



ブリーダー、ペットショップを巡る歳月。
犬の飼うことのできるマンション探し。
どの犬がいいのかなーー、と迷う歳月。
家族の中でのいぬ談義と誰が散歩させるのだという家族会議。
娘「私がさせる!だから飼って!」
そして、5年後、ついについに、犬を飼い始めた!


http://d.hatena.ne.jp/kimura-gaku/20081013/1223939530
ーーーが、それは小さなかわいいかわいい、ミニダックスフント

「このかわいい娘を誰が、熊の前になんかにさらせるものか!」

「???????」

(おわり)