人類の未来(1)ネアンデルタール人の謎/ホモサピエンスの挑戦

私はニュースと朝のNHKドラマと、日曜大河ドラマ以外はほとんどテレビを見る事はないが、たまにおもしろそうなものはビデオで見る。
この正月見逃さないと決めたのが、BShiのフロンティア「人類の未来」。シリーズだ。
イギリスとフランス制作の最新人類学事情。


私は、地球科学の最重要テーマは、この星、地球の未来への不安へどう答えるかであると思っている。
私にとって直接的には、地殻変動地震発生にかかわる地質学的研究が当面していることであるが、地球環境変動や人類の進化や未来を包括的に考えたいと思っている。
というのが、見逃さないと決めた理由。
三回シリーズで、それぞれが2時間という長時間番組であるが断続的に見ている。

最初は「ネアンデルタール人を巡る最新事情」
ネアンデルタール人氷河時代まで生きていた。彼らは絶滅し、頭のいい現代の我々、クロマニヨン人、すなわちホモサピエンスにとって変わったとならった。
20年前、ミトコンドリアイブの発見によってこの説は不動のものとなったかに見えた。
そして10年前、この仮説を証明する手段として、DNA解析の大プロジェクトがはじまった。
しかし、解析可能なネアンデルタールの骨はたった一つだけ。
いわば、たった一人の人間のひとかけらの骨から、人類進化の全てを語ろうという、とんでもない話だ。
おまけにネアンデルタールホモサピエンスの融合という新しい物語によって。
そのギャップを埋めるための論理と方法で今も大論争が続いている。

私は、DNA解析に着手したところまでは知っていたが、それがその後どうなったのかは知らなかった。
そして、結果は、いまだ決着せず、ますます論争が広がっているということだろう。

この解明の過程そのものも大変興奮させられるが、その科学方法論的に見ても大変おもしろい。
観察された事実を統一し(帰納)、それを説明するための仮説を生み、次はそれを証明するための新たな事実発掘の指針(演繹)を出す。
しかし、新たな事実がすべて予定調和でいけば、事実は真実と呼ばれ固定化する。しかし、1つでも合わない事実が見つかれば、それを包括して説明できる新たな仮説が必要だ。
そして、またその仮説を証明するための事実発掘の指針が出される。それを繰り返すのが科学だ。仮説の段階で、固執すると科学の勝ち組、または負け組となってしまう。
仮説には、仮説だと理解し、柔軟に対応しなけりゃ、仮説のゴミ箱の中に入ることとなる。あくまでも論理の筋、真実の定着に向けてならない。
新しい仮説に対する、研究者のインタビューへの対応を見ると、わかるね〜。柔軟かどうか。この番組でさえ。


人類進化は、ゲノム解析という20世紀にはなかった強力で革命的な方法を得て、この「仮説転がし」が急展開しているのだ。
そして、あわない事実が次々と出され、やがてもはや単なる仮説の小手先の修正ではどうしようもなくなる。
そして、進化そのものの基本的考え方を変えなくなればならなくなる可能性がある。
それを科学方法論では、「科学の革命」というのだ。

人類学は、どうみても今、この革命の最中にあると思えてならない。この科学は私たちの人類観を変えるだろう。それは150年も前、日本で言えば幕末のダーウイン以来のことだ。
見逃せない。この革命は確実に、生命科学、地球科学に波及するように思える。