合掌:西上原航君

悲しいことが起きてしまった。博士課程二年生の西上原航君が、急性脳腫脹で昨日亡くなってしまった。
いつもやさしい笑顔で、研究にいそしんでいた。
研究室こそ違え、鳥海先生のところの学生ではあったが、いつもセミナーや宴会は一緒だった。
鳥海さんと私は誕生日がわずか数日しか違わないので、学生諸君はいつも一緒にお祝いの会を開いてくれている。
年末、それが彼とあった最後となってしまった。
先週の修士の発表会の直前、病院に運ばれた。
しかし、すでに手遅れであったという。以来、意識不明が続いていた。
いよいよ博士課程最後に向けての1年、これまでの全ての人生をかける作業を目の前にして倒れた無念はいかばかりであったろうか。
また、発表まっただ中の後輩たちに動揺を与えないよう、配慮がなされたが、直接の後輩たちの悲しみはいかばかりであったろうか。
彼の後輩が、何もしらずに写した彼の元気な姿のスライドに、私は涙をこらえるのに必死であった。
これから、揚々たる人生を前に命を落とさざるを得なかった無念には涙してあまりある。
合掌。

追補:あまりにも残酷だ。彼は結婚していた。昨年秋、入籍を住ませていたという。奥さんは先輩にあたる立派な女性研究者である。
彼はシャイな性格でもあったので、一人前になるまではと皆に伏せていたのかもしれない。共に苦労を背負い、研究という茨の道に踏み出したばかりであったのである。
逝った者も無念だったでしょうが、残された者の無念も計り知れません。彼の意思は、皆で引き継がねばなりません。