余震3,本質的細部と末梢的細部を仕分けせよ

今朝の朝日新聞朝刊「もっと知りたい!」欄に「仕分けに反発ーー科学界反省も」のコーナーにその後の状況に対するマスコミから見た一つの見方が示されている。
日本地球惑星科学連合の意見書は、事業仕分け第1弾を終えた直後の11月18日からはじまった「一斉反発の第三番目」に位置している。相対的に速い反応であったことが分かる。

理数系学会のほとんどすべて、国立大学の理学部、工学部のほとんどすべてが「反発している」現状ななぜだろうと深い考察・理解をして欲しいと思う。これは単なる科学界の自己利益のための反発なのだろうか?こんなことは明治近代化以降140年の日本の歴史上、一度もなかったことである。理工学系の大学や学会には、明治以来の科学技術の導入、戦後の日本の復興や経済発展の基礎、それを支える人材養成を底辺で担って来たという自負があり、また未来の日本の発展も支えるのだという強い使命感がある。そのことに対して、乱暴に水を掛けるかに見える所業であったから、一斉反発が生まれたのである。鳩山首相が、この国の発展を支えるのは科学・技術・人材養成だと高らかに詠い、多くの科学者・研究者がそのことに勇気づけられ、期待し、一層使命感を研ぎすまし、邁進しようとしていた矢先の強烈な「冷や水」であったのである。薄給で励み、未来を担う若い研究者に、派遣切り同様の大量首切りが発生することなどまるで眼中にないかのようである。

科学の側にも反省すべき事は多々あり、指摘されている中には当たっている事柄も多々ある。それを覚醒させた意義は極めて大きく、「襟を正す覚悟」は多くの科学者研究者にはある。すでに新しい動きは開始されている。
しかし、どう見てもおかしいという判定が多い故に、一斉反発が生まれた。
後に「科学技術が重要でないとはいっていない」とは言ってみても、本末が転倒しており、信用の回復は容易ではない。
その姿勢を実際に見せて欲しいと思う。

税収に比べて、圧倒的に膨らんでいる国家予算である。その国の未来をどう拓くのかという根本戦略、その中で苦しくとも耐えられる成長戦略、その中で、誰しも納得いくような力強い国の未来の展望を示す国の科学・技術戦略、人材育成戦略という順序は必須である。その上で、細部にわたる仕分け、徹底した合理性の要求という論理の筋こそが、王道であり、「納得への道」である。そのような中で、ここは無駄、ここは当面我慢ができるのではいか、という仕分けならば、誰も反発はぜず、こぞって拍手喝采であったであろう。

「本質こそ細部に宿る」とは同じ紙面のオピニオン欄における仕分けチーム総括の言であるが、大局のない、並べての「細部いじり」は、科学・技術・教育施策においては本質的細部までも潰し、全体を死に至らしめる。

人間一人の体には、総延長10万キロの血管がある。
その中で、大動脈を一瞬でも詰まらせれば瞬時にして死に至る。
食糧エネルギー補給を基礎代謝以下に落とせば、ほどなく死に至る。
そんな当たり前のことがわかって、科学・技術・教育・人材養成事業の細部への仕切りが行われたのかとの疑問が色濃く残っているのである。本当に払拭して欲しい。

明日、連合会員メールニュース配信の日であるが、巻頭言で「日本の地球惑星科学の新しい建設へ」と題して、「いま、何をなすべきか」についてメッセージを送る予定である。