26学会共同シンポジウム 科学・技術による力強い日本の構築

  • 我が国の科学・技術の進むべき方向と必要な政策を提言する-


午後より上記のシンポジウムを開催した。300名収容の小柴ホールには立ち見がでた。
私は肩書きは地球惑星科学連合会長ではあるが、個人の意見を述べさせていただいた。
全体で作成した声明は、字句の最終修正後、連合のHPに掲載する予定です。
私自身、大変勉強になり、今後、何をなすべきかを考える重要な機会となった。

<以下はすべて個人の感想であり、地球惑星科学連合に加盟する48学協会で確認された意見ではありません>
第四期科学技術基本計画に対する意見は、5月末からパブコメを寄せる機会がありますので、その際に改めて、加盟学協会、個人会員の皆様にお願いし、必要ならば声明なり提言なりとしてまとめることになります。

今回は、その(1)不信反発からのはじまりと新しい芽

そもそも理工系の学会が一同に会するということは、これまで日本の歴史にはなかった。前年の事業仕分けの皮肉な成果である。多くの理不尽な事業仕分けの結果は改善された。それは科学者のコミュニティーがものを言えば、届くということをはじめて経験したものであった。
それは、自己の利害を前面にたてた陳情ではない。人という資源しかないこの国の存亡に対する無私の危機意識だったことが最も本質的なことであったと私は思っている。

これらの教訓を受けて、なぜ、今このシンポジウムかという位置づけも明確だ。
理念だけとはいえ、国の成長戦略が出され、第四期科学技術基本計画の素案が出され、この先6月の中間まとめ、そして年末の最終報告。
5月末からのパブコメ。6月には第四期科学技術基本計画初年度の来年度予算の基本骨格,そして8月に概算要求となる。
事業仕分けの最中で開かれたことも。このように学協会が国の科学技術行政に機敏に対応することもこれまでにはなかったことである。
その戦略の根本のところにものを言おうというのが主旨である。お客さんとしてのコミュニティーから主体としてのコミュニティーへの転換である。

内閣府科学技術総括官、総合科学技術会議相沢有識者議員、文部科学省研究振興局長が時間を押して参加講演をしていただくこともこれまでにはありえなかったことである。これらのことは、変化を見せてくれているところである。
しかし、公約をどんどんひっくり返す政権である。それだけでは不信はぬぐい去りきれない。

私は勉強不足でもあり、素案をざっと読み、最初の総括官のお話を伺っただけでは、第3期までと第4期からの本質的な違いはなんであるのかをよく理解しなかった。むしろこの間の政権党に対する不信感から極めて懐疑的に読み、聞いていた。科学技術のパイを増やさず選択と集中を繰り返している。むしろ一層集中を強めるのではないか。グリーン、ライフイノベーションという名の下に。そこを払拭しない限り急速に日本の科学・技術は縮小し、転落する。化学会が用意していただいた中国生産論文数大のブレークと対照的な日本の総論文数の減少、主要10大学は選択し集中したのに微増という結果はこの間の政策に大きな欠陥があったことを如実に示している。日本が大きく落ち込んできた原因は明らか。過度の選択と集中の結果なのである。そして広い裾野を支える部分を大幅にカットした結果なのだ。10年前には大学研究者の運営交付金平均100万だったものが今や40万。そのような額では論文を書くどころではない。そこのところは主催の岩澤先生が声を大にして強調された通りである。新しい基本計画が広い裾野を支える政策と調和のとれた適度な選択と集中。そのような戦略に大胆に転換できているかどうかが鍵なのだ。

「つぶす!」と宣言している総合科学技術会議と「作る」と宣言している科学技術戦略本部、その違いは何かということについて、総括官から個人としての見通しとしてお話をいただいた。それを明示したpptコピーが配布されたので、議論が進み一定の合意が形成されているのであろう。総括官は現在の総合科学技術会議は諮問機関、次の戦略本部は意思決定機関となろうという。
私は現在進行中の基本計画(戦略の作成)との役割分担、設置のスケジュールはどうなるのか?と質問させていただいた。
戦略本部は、内容の合意つくりを考えると、12月の国会で法案通過、来年度からになろうということであった。すなわち作成された計画に基づいて年度ごとの意思決定を戦略本部がしていくということである。そのようなことが明らかにされたのははじめてであろう。

このことに対して、会場からも多くの不安が広がった。
それは進行する事業仕分けの結果が関係している。様々な科学と技術の研究に関わるテーマが重複しているのは無駄、1つにせよとの雰囲気が広がっているからである。研究は明らかにしよう、あるいはある目的の技術を開発しようというテーマが同じであってもアプローチは多様であることが命なのである。そこに競争が生まれ、いい成果が生まれる。そんな当たり前のことが無駄とされ、1本化されると、それがこけると皆こけるのである。そのトップダウンを予算案決定権を持つ科学技術戦略本部はやるのではないかという危惧である。それを、決定権はないが事業仕分けは見せてくれているのである。「行き過ぎた計画優先の、トップダウンは国を滅ぼす!」との危惧を。

そして、政策研究大学院大学、経済学者の角南篤氏が当檀し、「科学・技術政策のあるべき姿と我が国の現状」との講演をしていただいた。
昨年の事業仕分けの時に、ニュースとしてNatureに書かれた方だ。それで世界中で日本で起っていることに皆、びっくりした。
そして「あ〜、日本は縮む」と外国の多くの科学者が思い、その後の復活の支援者として多くの科学者が意見を寄せていただくきっかけともなった人だ。

角南氏の講演は大変、勉強になった。

(つづく:29日は学生を連れて、埼玉の長瀞まで日本地質学発祥の地に見学に行きますので upは30日になります)