26学会共同シンポジウム 科学・技術による力強い日本の構築

  • 我が国の科学・技術の進むべき方向と必要な政策を提言する-

(2)微かな期待

角南氏は経済学者であるが、なかなか面白い話をされた。

進化経済学」を、今度暇を見つけて読んでみよう。<あ〜、また知りたいことが増えていく>
経済学の限界は、やはり予測可能性。科学・技術で成果が得られると確実なものには投資する。
これは当たり前。しかし、経済は予測不可能なもの。だから当たらない。
よく聞く「経済における複雑性の科学」の世界だ。

科学と技術への投資において、予測不可能な部分が「基礎科学」。
そこへどの程度の投資をすべきかについて、現在のメジャーな経済学には答えはない、という。
だから、わかりやすいものへ投資する、そこにしか理論はないのであると。
「科学と技術における選択と集中」のこれまでの施策を支えた経済理論だ。

しかし、習熟した先進国は、そのバランスを長い経験によって知っているはずだ、その実態を調べたい、とのこと。
多いに期待したい。

また、これまでトップダウンボトムアップだと2元論的であったが、それをうまく融合させたミッションというやり方があるという。

先月アメリカで私らが関係する、これまでつづいたNSFの海洋関係のMargins計画の今後10年の戦略会議に参加した。
それはミッションである。まず、戦略的テーマを設定するための科学者総出のボトムアップ会議だ。ほぼ1週間、40前後の若い研究者に全ての運営を任せて、White paperとしてまとめさせる。それをNSFがレビューにかけて、最終決定に持っていく。200名からの研究者が参加し、発言は手を挙げさせるだけではなく、twitterも使ってやる。それを運営する側が断続的に休憩を取りながらまとめていくのである。出来上がったdraftは更にフィードバックをかける。我田引水で自分の研究に水を引き込もうとしてもサイエンス全体のビジョンにおいて説得性を持たないと、浮くのは当たり前のことだ。

提案におけるボトムアップそこにトップダウンを何ステップもとりいれて、最終決定はもちろんトップ。このようなやり方はアメリカでは定着している。もちろんそのミッションにはまらない基礎科学はNSFの一般研究費申請に依存することとなる。

私は、角南氏の話を聞きながら、そのような私の関連する分野のイメージを浮かべながらミッションという話を聞いていた。

日本の大型研究や、プロジェクトは、審議会という少数の人が関与して決めてしまう雰囲気があり、密室的でその決定過程が開かれるということはほとんどなかった。

角南氏のいう、「進化経済学視点」が、今後の科学技術施策に取り入れられるならば、未来があるかもしれない、と期待を抱かせてくれる講演であった。
多くのpptを用意していただき、もっと聞きたい、質問したいことも多々あったが、いかんせん時間が不足している。

そして、シンポジウム、パネル討論。

(すいません、またまた学内業務。またあとで、つづく)