新渡戸稲造 自警禄
この数日、ニュースはノーベル賞で騒々しい。山中氏の受賞は大変うれしく喜ばしい。基礎科学の重要性を多くの人たちに理解してもらうまたとない機会ともなっていると思う。
一方、文学賞で村上春樹氏ではなく中国人になったこと、領土問題もからめたアジアの科学と文化に関する議論がマスコミで喧噪状態とさえなっている。
その喧噪の中、新聞紙上に面白い記事があった。紙幣の顔についてである。中国の紙幣はすべて毛沢東、韓国紙幣はハングル創設の世宗と儒学者、日本は1984年以降、それまでの聖徳太子や伊藤博文等の政治家、歴史上の人物をやめて、福沢諭吉、新渡戸稲造、夏目漱石。その後5千円は樋口一葉、千円は野口英世。いずれも文化人か学者だ。時期をみて最初のノーベル賞受賞者の湯川秀樹や文学賞の川端康成などをお札の顔にするとよい、という論説だ。
この論、賛成! だって新渡戸稲造ってお札の顔になるまでその人を日本人は忘れていたが、それを期に明治の国際感覚と矜持を取り戻そうとのブームが起きた。ノーベル賞受賞者の顔となれば、この国の礎、科学を一層大事にしようという文化がもっと根付くかもしれない。
新渡戸の顔、私もそのことに啓発された一人である。東大教授も務め、抜群の国際感覚の持ち主であり、国際結婚もし、国際連盟の事務次長も勤めた希有の日本人であった。
この新聞記事を見て、本棚に目をやった。
彼の記した武士道は、日本を知るための国際的ベストセラーとなり、いまでも書店に多く並べられている。私の本棚でその「武士道」の横に、大正5年新渡戸54歳の時に記した「自警禄」が目に入った。毎日少しずつ読み、日々の戒めにするとよいとの解説がある。よく宗教書にあるように説教じみていないという。
日々の瞬読として、金田一京助「ことばの歳時記」を食卓横においてあるのだが、これも仲間入りさせることにしよう。
- 作者: 新渡戸稲造
- 出版社/メーカー: 講談社
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