地球惑星科学参照基準

昨日午後、東京大学地震研究所で、学術会議地球惑星科学委員会大学教育問題分科会主催の公開シンポジウムが開かれた。3時間のシンポジウムであったが、大変意義深いものになった。

1)地球惑星科学とは何かをきちんと定義し、
2)他の科学とは違う固有の特性を明らかにし、
3)ここで学ぶ学生の身につけるべき基本的な素養を明示し、
4)学習方法、評価方法の基本的考え方を示し、
5)市民性のかん養と専門教育と教養教育の関わりについても明示する

と。

文部科学省中央教育審議会が学術会議に議論するよう依頼があったということからはじまったそうである。参照基準が出来ても学習指導要領のように大学教育を縛るものではないと学術会議の側では強調している。これまで何度も繰り返し議論されてきた。先の地球惑星科学連合大会でも、関連する全国の大学の学科長・専攻長会議でも議論された。

この分野は、高校理科の中の地学に相当するが、理系受験科目としてほとんど履修されておらず、視野の中にない。その一方で地震や火山、台風、地滑りなどの自然災害に対する防災減災対策、資源エネルギー、大気汚染、地球温暖化対策、天気予報など地球を相手とする所業の基礎知識として絶対欠かせない。また、いらぬ迷信を退け、この宇宙、太陽系、地球そして生命はどこからきてどこへ行くのという私たちの自然観、宇宙観、地球観、生命観の根本にかかわる文化の創造の根本に拘っている。すなわち、今後もきちんと自然とつきあうためには絶対欠かせない。

地球惑星科学はとてつもなく広いとその中にいる人たちさえ感じている。「井の中の蛙」とはいうが、その井戸すら広すぎる。当然にも昨日の議論の最大の焦点は、とてつもない広さと狭いがしっかりと焦点の当たった深さ、この両者をどう設計するのかということである。

高校大学連携、大学入試、既存枠の打破、それらをすべてやりながら進める必要がある。
ここ数年の議論がこの国の未来を決める。
この参照基準が出来上がると、次は入試制度改革、大学再編成、専門学科再編成へとつながっていくことは明らか。というか、明確にその意思ですすめられている。

井の中の蛙」どころか、「小石の裏の川虫」でいると、知らないうちに大嵐が来て「胡散霧消」。

川虫は地にへばりつきじっと耐えるか、大嵐でも自由に泳げる進化を遂げるか。
どちらも沢山の屍が生まれるだろう。しかし対応が多様であれば、どこかが生き残る。ダーウィン進化論の基本だ。ただし、どっちにしても流れを見ていない川虫は、なすすべもなくさようなら。

という緊張感に溢れつつ、しっかりとした議論とアクションをつづければ未来は暗くはないという希望に溢れる充実した会議であった。
近いうちにパブリックコメントを求めるために、地球惑星科学連合のホームページに案が公開されるという。関係者の多くのリアクションを推奨したい。