地質学の自然観・自評

理学系・理学部ニュース来年1月号に著書の自分評価と宣伝原稿を頼まれたので、自己宣伝/我田引水で申し訳ないのですが--. まだ字句修正があり、最終版となった時には差し替えます。また、著作権上、理学部からクレームがついたら削除します。

以下です。
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コラム 理学の本棚
木村学著:地質学の自然観

 本書で、地球惑星科学の老舗ともいうべき地質学について、著者の思いをつづった。この科学の夢は1960-70年代に起こった科学革命、プレートテクトニクス理論の成立によって一度達せられた。そして半世紀の時が流れた。今、この科学の夢は地球と惑星の全てを対象とし、総合科学としての地球惑星科学の構築の理念へとつながっている。観測ビッグデータを処理し、地球惑星中心核に至る温度圧力下での実験をすすめ、理論の筋を通した地球惑星の総合理解をめざしている。時々刻々の現在から地球史46億年に至る時間スケールまでの事象をシームレスにつなぐ斉一主義の思想は地質学の根本哲学である。

 2011年、東日本大震災が起こり、地球惑星科学は根本的問いかけに迫られている。科学における「知ることと、役に立つこととの関係は何か?」である。著者は、南海トラフで、プレート境界の研究を地球深部探査船「ちきゅう」も使って共同で進めている。そこでは今世紀中に海溝型巨大地震津波が発生すると予測されている。地球一周と同じ4万キロの長さの海溝、そこは地球最大規模の地震津波の巣である。まず「知ること」、それがやがて「役に立つこと」につながる、それがこの研究に取り組んでいる科学者の思いと願いである。

関連する講義は、固体地球科学(5学期分担)、「プレートテクトニクス」(6学期分担)。関連する研究を地球惑星科学専攻・固体地球科学講座では進めている。
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地質学の自然観

地質学の自然観