朝会の記録「童話の窓」(7)王子の眼をえぐったザロカス王

クロリヤンスのザロカス王は、国民がぜいたくで遊樂にふけっているのを心配して悪風を一掃するためには厳格な法令が必要であろうと思って一条の法律を公布しました。
「もし、国民にして風儀を乱す者あらば両眼をえぐり抜くべし」
国民は法を恐れ、風儀の乱れは直っていった。
だがひとりだけこの法を守らないものがあった。
王の最愛の王子である。
国民は王が果たしていかなる処置を取るであろうか注意して見守った。
王は迷った。子を愛するは王者とて同じこと。されど私情をもって国法を無視することは許されない。
さりとて我が子の両眼をえぐるはなんんとも忍び難い。王として父として子のために、さてどの道を選んだものか、悶え抜いた。
ついに王は刑の執行を宣言した。
刑場の準備はできた。
王の命により執行官は小刀を振りかざして、王子の1眼をえぐり、更に他の1眼に及ぼうとした時、王は声高く、
「待てよ。これにて足れり。他の1眼はこれにて償うべし」
といって、自らの1眼をえぐり取った。
そうして王は、王子の罪をば背負って、愛児が失明する不幸を救い、かつ法の尊厳を全うしたのであった。