第二話 奥深き満州にて(1)

激烈腹痛小話 第二話。
今年の6月、私は北京へ国際統合深海掘削計画の科学評価委員会幹部会のために北京にいた。この議長は河野長氏である。
1987年に訪問して以来の実に21年振りのことであった。21年前、河野長氏が隊長であった海外学術調査「東アジアのテクトニクス」の一員として
お手伝いするためである。
「わー、とんでもなく変わったね」「私はあのとき以来だ」と河野氏が感慨深げに話をした。
「そうですね、すざましかったあの調査は」「河野さん、覚えていますか?いま北朝鮮からの脱北者が滞在しているあの国境のすぎそばの街での出来事?」
「ああ、すごかったね」
と、そのときの話がはずんだ。そこが、同時に山崎豊子の小説と1995年にそれが映画となった残留日本人孤児「大地の子」の舞台でも有名になった場所でもあることなど知る由もなかった。
そこでの、私たちの経験した七転八倒と人の出会いの物語を第二話として紹介しよう。
(つづく)