未来を見据えて 定年まであと328日

 昨日、(公)地球惑星科学連合(JpGU)の理事会が開かれた。今月24日からはじまる今年の大会前、最後の理事会。
準備の方は、事務局始め多くの方のご尽力で秒読み段階に入った。講演件数ほぼ4,000件。参加者は8,000名を超えることを期待している。
しかし、理事会の議論の中心は、2016年、2017年に関する議論であった。
 なぜなら、2017年に私たちの連合とアメリカ地球物理学連合(AGU)との初めての全面合同大会を開催することを昨年合意し、その本格的準備を開始したからだ。

 この2017年大会には、私たちの特別な思いがある。
 25年前に、AGUが主催で、金沢でAGU-WPGMという会議が開かれた。アメリカ地球物理学連合が自ら日本に乗り込んできて、西太平洋地球ダイナミクス会議を開いたのだ。彼らは、その会議を台湾、香港、オーストラリア、などと次々と場所を変え会議を自ら主催して来た。日本では、2000年に再度開かれた。
アメリカはアジア地域などにおいて、自らが主催し、そこに多くの研究者を巻き込んで世界をリードする科学コミュニティー戦略を取っていたのだ。
 しかし、この間、日本では、それまで散立していた地球科学関連の学会が一堂に会して、地球惑星科学連合を設立した。そして、年々歳々、その開催規模を拡大してきた。

 10年前、設立にあたって、日本の地球惑星科学連合の戦略を議論した。
アメリカ、欧州と並び世界の地球惑星科学を先進するリーディングコミュニティーになる」しかし、科学の世界だ。喧嘩をするわけではない。科学の発展への貢献を競い合い、全体を発展させるのだ。

 そのために、欧州地球科学連合(EGU), アメリカ地球物理学連合(AGU)、そしてシンガポールを拠点にすでに活動を開始していた個人加盟ベースのアジアオセアニア地球科学会(AOGS)と連携体制を構築した。私たちのJpGUを含めたこの4つが、いま世界で活動する領域複合型の大規模地球科学会である。

 そうこうしているうちに、地球環境問題、温暖化問題が急激に浮上してきた。世界人口爆発、アジア勃興など人間活動と地球との相互作用が人類社会の未来に暗雲を立ち込ませていることが明確となってきたのだ。

2004年スマトラの大地震は環インド洋沿岸諸国に大きな被害をもたらした。さらに2011年東日本大震災福島原発事故は、地震津波とそれに伴う被害がグローバル災害となることを知らしめた。これも人類社会の未来への暗雲を更に暗くした。
 世界人口爆発は、今世紀末にはその極限に達すると予想されている。生存をかけた熾烈なせめぎあいは政治経済などにおいて極度の緊張をもたらし、ボタンを一つ掛け違えると雪崩を打って崩れ落ちる危機にあるかに見える。

 科学の役割は、危機に対して警鐘を鳴らすと共に、未来を照らなければならない。特に地球惑星科学の役割は、まさにこの地球と、それを取り巻く宇宙からの視点で、未来を照らすことである。目の前が危機であってもそれに耐えて乗り越えればその先に明るい地球がある、あるいはつくることを示す役割があるのだ。

 日本社会のグローバルな視点で見たときの歴史的特徴は、その20世紀にある。19世紀後半以降、アジアの遅れた社会から一気に浮上した。が、失速した20世紀前半の歴史を持つ。多大な迷惑をかけた。その痛烈な反省とあらたな決意から、更に再浮上した。が、またまた失速しかかっている。稀有な経験を有する西洋文明圏以外ではほとんど唯一の社会なのだ。
 この稀有な経験を乗り越えることに対しての世界の期待は大きいと「ひとりよがりではなく」思いたい。そこに夢を見られる可能性があると。
 
 大自然災害社会、無自然資源社会、異質文明社会、超高齢少子社会、この日本社会の成功と失敗と再浮上努力中の 物語。それを世界に知ってもらい、私たちも学ぶ。その中の1つ地球惑星科学社会、その劇的再出発点にしたいというのが、2017年地球惑星科学連合大会の位置付けなのである。

 こちらもカウントダウン体制に入った。