緑薫る北海道大学の夏キャンパス

蒸しかえる東京から北海道へやってきた。
その足で、北海道大学へ。
研究の打ち合わせのためである。
しかし、ここは私の母校でもあり、夏に訪れるのは本当に久しぶりなので、ゆっくりと歩いて理学部まで行くことにした。

南門は、40年も前と変わらない。その横にある看守の建物もそのままだ。
中央ローンは日差しを浴びて輝いている。なにやらいい香りが漂い、ツンと刺激する。
まだ、露が残る刈ったばかりの芝生から立ち上っているのだ。
その薫りを目一杯吸い込むべく、おもわず深く深呼吸をしてしまった。

昔は、鮭がここまで昇ったという小川。
学生時代にはただのどぶ川であったものが、水を引き、子らが遊ぶ清流としてよみがえっている。



クラーク像の影の白樺の木立。
ここは、三浦綾子の小説「氷点」で、陽子がその出自を知り、たたずむ場面だ。
遠い学生時代に、「ここなのか!」と感動したんだった。
その白樺も、こんなにも大きく太くーー。


理学部、そこは現在は、博物館として残った。

ここに、8年もの間お世話になった。

入り口前の足下。
「おお!オオバコだ!」

たかが、雑草なのだが、とてもなつかしいものに再会したような奇妙な気分になった。

階段の手すりもすり減った階段もそのまま。

ある日、押し掛けた学部長室も、そのまま。

ん、いいね。タイムカプセルだ。

アインシュタインドーム。
この建物が造られた時、まさに20世紀初頭の物理学の革命期であったことを如実に反映している。
この、ドームの彩る3階が、私たちの教室であった。

外は、大きな楡の木の下に広がる森。
ここで闇ジンギスカンで、酔いつぶれた日々もいにしえの彼方だ。
いまは、きちんと整備され、”秩序”だったジンパらしい。
常識を恐れない破天荒を旨とする、北海道大学の矜持はどこへいったのだろうか。
「混沌の中の美」こそ、青春であった日々がなつかしい。

そこにまばゆいばかりの木漏れ日が差しこんでいる。

昔の予科の校舎は、今は整備されている。
私たちが学生の頃は、サークルに貸し出され、崩壊寸前のボロ屋であったのだがーー。

古河講堂もきれいになっている。

明治黎明、すなわち近代日本黎明期の北海道を彷彿とさせる、心休まるキャンパスである。

Boys, Be ambitious!