学会とはなにか(7)招待講演

 学会のセッションやシンポジウムにおいて招待講演というのがある。招待されることは名誉なことであり、最近、欧米では様々な職の応募に当たって自分の履歴書に書き込み、重要な業績として使われている。そのようなことがあるので、招待講演の価値を高めるために、全体の講演数に対して一定の割合で制限を設けるのが普通だ。昔はセッション全部が招待講演などという場面もあったようだが、現在そのようなものは見受けられない。招待講演の価値を高めるための制限を設けている。当然のこととしてセッションを運営する研究者は、招待講演にはならない。自分で自分を招待するというのは、明らかな利益相反の構図だからだ。コンビナーなどのような活動は、履歴書において主催のセッションやシンポジウムの業績記録として記すのが普通だ。

 しかし、日本においてはそのような国際常識がまだ理解されていないところもあるようだ。主催者、コンビナーが、皆、招待講演者だったり、セッションの全部が招待講演者だったりする。それを見ると、それはシンポジウムやセッションというより、全て指名講演者によるパネル討論会だ。せめて、主催者が自らを招待するという我田引水の滑稽な構図はないほうがよいと思うがいかがだろうか?シンポジウムの理想は、同じテーマで異なる意見を持つ人たちが意見を開陳し、討論を展開するというものだろうと思いたい。同じ意見の人たちが講演としてつながるものはプロパガンダ講演会的なものとなってしまう。